空調服って実際どうなの?そんなあなたに教えます!

暑い夏のシーズンになると、何かと話題になる空調服。それを見て、自分の作業現場でも導入を検討している経営者の方や現場責任者の方もいるのではないでしょうか。その一方で、実際にどれだけの効果があるのか、コストパフォーマンスはどうなのか、疑心暗鬼になっている方もいるはず。

そこで、空調服の仕組みやメリットなどについて、ここでは詳しく紹介しましょう。ぜひ参考にしてみてください。

全身に風が行き渡る空調服のメリットと注意点

空調服はなぜ涼しいの?

暑くなるシーズンや、高温になりがちな作業現場でも、空調服を着るだけで、体を冷却することができます。その仕組はとってもシンプル。まず空調服には小型ファンが内蔵されており、それで毎秒約20リットルという大量の外気を、服の内側に取り込みます。

次に外気を利用して体表面の汗を気化させ、同時に気化熱を発生させます。そして、体表面を通り抜ける温かい湿った外気は、気化熱と一緒になって、襟元や袖口から放出されます。この一連のプロセスによって、熱が体外へ出ていくため、体が冷やされるのです。

実はこれ、生理クーラー理論と呼ばれる仕組みを応用したもの。通常、人間の脳は皮膚や体温が高いと感じると、汗腺から必要量の汗を分泌させて、体温を下げようと働きます。この生理的な仕組みをさらに活用したのが、生理クーラー理論です。

人間の体は発汗しても、汗そのものを気化させる能力はありません。このため、効果的に体温を下げるには、どうしても限界が生じてしまいます。そこで人工的に汗を気化させ、その気化熱を発散させて体の冷却を図れば、さらに体温を下げることが可能と証明したのが、生理クーラー理論です。

空調服はまさにこれを実用化したものと言えます。

実際に着用した効果やメリットはどうなの?

空調服の仕組みが解っても、実際の効果が気になりますよね。その点については、最大空調能力を温度33℃・湿度50%の基準で算定した場合、強い力を必要とする重労働や、比較的スピードを求められる仕事であっても、十分な能力を発揮することがデータの上で判明しています。

また着用するメリットについても、次のような点が認められています。まず身体に対するメリットについては、体表を冷やすことでムダな汗をかかなくなるため、疲労を抑えて、常に快適なコンディションを維持することができます。

また空調服を着れば、汗をかいても直ぐに蒸発するので、体臭をはじめ皮膚の疾患なども予防することが可能になります。経済的メリットに優れていることも、空調服の魅力。例えば、充電式ニッケル水素電池を用いた空調服を、1日10時間着用したとして、1ヶ月の電気代はわずか約20円。

室内の作業現場で大型のエアコンや空調を使用している場合と比べて、どれだけ安価か理解できるのではないでしょうか。さらに作業効率の向上と同時に、人件費が削減できるメリットも見逃せません。空調服を製造する業界大手企業の試算によれば、社員1人あたりの人件費を月約50万円と仮定した場合、作業効率10%の向上で、丸まる1人分の人件費が浮くことが判っています。

空調服選びでは、作業シーンや用途ごとに最適なものを選ぶ!

一口に空調服といっても、機能や素材さらにデザインまで、幅広く多種多様な製品が販売されています。このため、作業シーンや用途ごとに最適な空調服を選ぶことが求められます。もしこれを怠ると、かえって現場で働く人々の作業効率の低下や、健康状態の悪化を招いてしまうことにもなりかねません。

そこで、ここからは作業現場ごとにふさわしい、幾つかの空調服を紹介していくことにします。

建築現場ではフルハーネス安全帯着用を前提とした空調服を選ぼう!

屋外や高所での作業が多い建築現場。そんな場所では、フルハーネス安全帯着用を前提とした、専用の空調服を選ぶことが大切です。高所ではフルハーネス安全帯を身体に取り付けることが法令で義務付けられていますが、専用の空調服では安全帯が固定しやすいように、様々な工夫が施されています。

まず背中からはランヤードが取り出せる上、使用しない場合にはファスナーで閉じることもできる構造になっています。もちろん使用中であっても、涼しい空気が漏れることはありません。また製品によっては、フルハーネスのフックを引っ掛ける休止ホルダーがあるものや、ファンの脱落を防止するメッシュが付属しているものもあります。

電気や精密機器を扱う現場では、帯電防止機能のある空調服を!

屋内外での電設作業をはじめ、半導体を製造する精密機器工場、あるいは塗装現場等では、静電気による機器類の損傷や誤作動、さらに火災などに最も注意しなければなりません。このため普段からこのような現場では、静電気が生じにくい衣服を着用することが求められます。

そこでおすすめするのが、帯電防止機能のある制電空調服です。導電性繊維を織り込んだ、格子状の織柄が特徴の生地を採用しており、帯電しにくい仕様になっています。さらに製品によっては、両脇下にデオグラフトテープを取り入れることで、汗の臭いを分解消臭する上、耐洗濯性にも優れた機能を備えています。

アクティブな活動が求められる現場ではこの空調服!

配送や倉庫といった物量業の現場では、重い荷物を反復して運んだり、スピーディーな動きを求められるシーンが珍しくありません。運動量や肺活量を多く消費する作業だからこそ、空調服にもそれに見合ったものを選ぶ必要があります。

例えば配送の仕事ならば、アクティブに活動しても負担にならない、軽量素材の半袖タイプのものや、屋外で風雨に直面しても影響を受けにくい、撥水性や透湿性に優れた素材のものがおすすめです。倉庫作業の場合でも、それぞれのシーンに応じた空調服を選ぶことが大切です。

倉庫でもヘルメットを着用するような現場では、フードをかぶっても機能する、綿製で薄手の空調服がおすすめです。吸湿性に優れ、肌触りや着心地も良いので、フード着用中でも快適に過ごせます。もちろん清涼感も抜群。

フードを経由してヘルメットの中までも空気が流れるので、頭部までしっかり冷却することが可能です。

交通量の多い作業現場では、視認性に優れた空調服を!

道路工事や路上警備の仕事など、交通量の多い作業現場では、人対車両事故等のリスクを低減するために、視認性に優れた作業服が求められます。

そこで、蛍光生地や再帰性反射材を採用した空調服をおすすめします。高い視認性を備えているので、日中はもちろん薄暮や夜間の作業中でも、着用者の存在をハッキリと目立たせることができます。

また暑いシーズンに空調服を着用することで、直射日光やアスファルトの照り返しによる、熱射病や熱中症の防止にも役立ちます。