全身を覆うタイプの空調服を扱う際のポイント

一般的な空調服は上下に分かれているため、ジャケットだけに遮熱効果があります。しかし、上下が一体になって全身を覆う形状の空調服なら体の隅々まで風を送り、外気の影響を軽減させることが可能です。使用環境によっては最適な一着になりますが、その一方で取り扱いには注意しなければいけません。

外気の熱を遮断できる空調服のメリットや適切な扱い方について学びましょう。

空調服って実際どうなの?そんなあなたに教えます!

全身を覆う空調服は特殊な環境に最適

空調服は衣類の内部に風を送り込んで空気の層を作り、外気の熱を遮断させる効果がある作業服です。冷風で体を冷やすのではなく、外気の熱を遮って体温の上昇を防ぐ仕組みになっています。そのため、元々は冷房設備を置くことができない屋外での作業に適した衣類として普及していました。

現在では熱中症予防に効果があるとして、部屋着やアウトドア用の衣類としての需要も増えています。

作業現場でも屋外だけではなく、気温が上昇しやすい施設内での作業服として空調服が重宝されているのです。また、上下が一体になった作りの空調服は体全体を空気の層で覆うことができるので、非常に気温が高い場所でも熱中症を患うリスクが大きく軽減されるのです。

一般的な空調服は下着の上から着用しますが、全身を覆うタイプの空調服は既に衣類を着用した上から重ね着するのが普通です。これは防塵服を基にした空調服に多く見られる傾向であり、精密機器の製造ラインなど高温でも冷風を送るのが難しい環境での使用を前提としているためです。

精密機器はわずかな埃が触れても故障するおそれがあるので、製造ラインでは強い風を起こすことができません。気温が上がっても冷房を使えない所が多いので、熱中症を避けるためにも作業員は空調服の着用が必須なのです。

着用に慣れている防塵服を空調服に改良することで、コストを抑えながら外気の熱を遮ることができるようになります。

全身を覆うタイプの空調服は電池が減りやすい

空調服に使われるファンは充電式の電池で動かしている物がほとんどです。メーカーによって多少の違いはありますが、約七時間は動かし続けることができます。一日の労働時間にほぼ合致しますが、これはジャケットだけに風を送る一般的な空調服の場合です。

全身を覆うタイプの空調服は送る風の量が多くなり、それだけファンを動かすモーターにも負担がかかります。全身にくまなく風を送って空気の層を作る必要があるので、必然的に出力が大きくなって電池の減りも早くなるのです。

一般的な空調服用の電池なら約三時間から四時間で充電した分を使い切ってしまうことも珍しくありません。電池は充電を繰り返すほど性能が落ちるので、古い電池なら時間はもっと短くなります。働く時間が八時間と仮定しても電池が一つではまったく時間が足りないので、予め充電しておいた予備の電池を用意しなければいけません。

また、充電の回数も増えるので電池の劣化が進みやすくなり、買い替えの回数も増えることを併せて注意します。上下一体型の空調服に対応している高容量の電池が売られていますが、それでも七時間から八時間まで動かし続けるのはほぼ不可能です。

作業中に電池切れでファンが止まる事態を避けるため、予備の電池は複数用意しておくのが賢い対処法と言えます。

空調服の洗濯に関する注意点

屋内で着用する空調服も次第に汚れるので、そのまま放置するのは衛生的ではありません。汚れによって生地の変色や伸縮性の低下といった不具合が生じることもあるので、定期的に洗って清潔に保つ必要があります。その際、ファンなどの送風機器は水濡れによる故障を避けるためにも必ず外さなければいけません。

送風機器に汚れが付いている場合、きつく絞ったタオルで撫でるように拭き取るのが正しい対処法ですが、モーターや配線、電池の端子部分に触れないように注意します。また、ファンに汚れ取り用のフィルターが付いている場合は綺麗な新品と交換することも忘れてはいけません。

フィルターが汚れていると風の通りが悪くなり、遮熱効果が低くなってしまうのです。空調服の洗濯は家庭用の洗濯機で行うことができますが、乾燥機にかけることはできません。空調服の多くは気密性を保つために化学繊維の生地で作られています。

乾燥機は高温の熱風を当てて洗濯物を乾かす仕組みなので、熱に弱い化学繊維を乾燥機にかけると縮んでしまうのです。材質によっては表記サイズよりはるかに小さく縮んでしまうこともあるので、洗濯した後の空調服は直射日光の当たらない、風通しが良い所で陰干しをするのが正しい乾かし方です。

全身を覆うタイプの空調服は生地の面積が広いので乾くのに時間がかかりますが、それでも乾燥機は使わずに陰干しによる自然乾燥を選ぶのが品質を損なわないための条件なのです。

送風機器の買い替えは同じメーカーで統一させる

ファンなどの送風機器も使い続けるうちに劣化して性能が低下します。すぐに電池切れになったり、風の勢いが弱くなったら新品に買い替えるサインです。送風機器は空調服メーカーが単体で販売しているので買い揃えるのは難しくありませんが、交換の際はすべて同じメーカーで統一させます。

同じ空調服でもメーカーによって送風機器の性能に多少の違いがあるのが理由です。ファンを動かすモーターの出力や電池の容量、端子の形状などメーカーごとに独自の規格が設けられています。そのため、異なるメーカーの機器を組み合わせると故障や感電などのトラブルに見舞われる恐れがあるのです。

また、送風機器を改造するのも重大な事故に繋がるので絶対に行ってはいけません。

空調服の購入はサイズの確認が必要

空調服は気密性の高さが特徴ですが、その分生地の伸縮性は非常に乏しくなっています。体が動かしにくい欠点があるので、購入の際は試着して着心地を確認する必要があります。全身を覆うタイプの空調服は衣類の上から重ね着する形になることが多いので、特にサイズ合わせは慎重に行う必要があります。

重ね着を前提にサイズを決める他、体の動かしやすさにもこだわることが大切です。関節部分に余裕が無いと曲げた際に生地が破れてしまうことがあります。重ね着の場合は衣類の生地との摩擦で次第に薄くなることもあるので、サイズの他に生地の材質にも気を配ることが重要なのです。

店舗で購入する際は試着ができるのでサイズ合わせは容易ですが、通販での購入は試着ができません。そのため、空調服のサイズを確認するだけではなく、実際に購入した人による評価を複数比較して、自分の体に最適な形なのかを慎重に判断しなければいけないのです。